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2015年08月17日(月)

遺言で注意すべきこと・・・遺言者に健全な判断力はありますか?

1 遺言の有効性が争われる場合で意外に多いのは、
 遺言者・被相続人が遺言をした当時、認知症に罹患しており、
 正常な判断力がなかったはずだ、との主張が相続人からなされることです。

  このような主張が出てくる背景には、まだまだ「遺言」というものが一般的ではなく、
 遺言者が自発的に「遺言」を書き遺すというよりも、
 身内の誰かが書いてもらっていることが多いためではないか想像されます。
  かつて新聞で、著名な企業人か芸能人か名前は忘れましたが、
 毎年正月に子供たちを集め、その目の前でご自分の遺言書を書いて読み聞かせる
 との記事を読んだ記憶があります。
  このような形をとれば、遺言書の中身についてはさておき、少なくとも
 遺言者の「判断力」についての争いは避けられるのではないでしょうか
 (なかなか、真似のできることではありませんが・・・。)。

2 以上のような意味で、遺言を有効とするには、遺言者に正常な判断力
 (=自身の行為の結果を判断することのできる精神的能力のことであり、
 法律的には、「意思能力」という用語が用いられます。)があること要し、
 認知症に罹患するなどして、正常な判断力がない状態で作成された
 遺言書は無効となります。

3 認知症ではなくとも、人は加齢とともに精神的能力が低下・減退すること
 もあり、遺言書を作成した当時、正常な判断力があったか否か、事後的に判定する
 ことが難しい場合もあります。
  
  民法は、必ずしもそのような場合を想定したものではありませんが、
 成年被後見人(=常時、正常な判断力を欠く状態にあると認定された方)が
 遺言をするには「事理を弁識する能力を一時的に回復した時に限り、」且つ
 医師2名以上の立会があることを要件としています(民法973条1項)。
  そして、立会った医師は、遺言者が遺言の際に、事理弁識能力を欠く状態には
 なかった旨(要するに、正常な判断力があったこと)を当該遺言書に付記して、
 署名・押印することが求められています(同条2項)。

4 高齢者の方に遺言書を書いてもらう場合は、万一、少しでも認知症の疑いがあれば、
 上記のような方式を採れば完璧ですが、念のため医師の立会をもとめるか、少なくとも
 医師の診断書を取っておくといった配慮をすることが有益ではないでしょうか。
  最近の判例では、公正証書遺言でさえも、遺言者の意思能力が否定され、
 裁判の結果、無効とされる例が散見されますから・・・。