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2016年01月17日(日)

融資先が反社会的勢力であった場合の信用保証の効力について

1 本年1月12日、融資先が反社会的勢力であった場合の信用保証の効力について、
 最高裁判所が興味深い判断を示しました。新聞でも報道されましたが、その影響について
 考えてみました。

2 この事件は、何件かの融資案件のある中の1件に関する判断です。
 概略次のような事案です。
  A社がX銀行から融資を受けるに際し、Y信用保証協会に債務保証を委託し、
 この委託を受け、X銀行とY保証協会が保証契約を締結し、A社への融資は実行されたが、
 後に、A社が支払い不能となり、X銀行がY保証協会に保証債務の履行を求めました。
  Y保証協会は、A社への融資実行後、同社が反社会的勢力であることが判明したことから、
 保証債務の履行を拒否したため、銀行が提訴したものです。

3 本件において最高裁判所は、原則として保証契約を有効としながらも、保証協会が
 条件付きで保証債務の履行を拒否できる場合を認め、この条件を満たしているか否か
 再度審理させるために、原審に事件を差し戻したのです。
  ここにおいて最高裁判所が示した条件とは、次のようなものです。
 「銀行と信用保証協会とは、保証に関する基本契約(この事件では、昭和41年8月ころという
 非常に古い契約の存在が認定されています。)上の付随的義務として、
 個々の保証契約を締結して融資を実行するに先立ち、相互に主債務者が反社会的勢力で
 あるか否かについて、その時点で一般的に行われている調査方法等にかんがみ相当と
 認められる調査をすべき義務を負う」というべきであるとし、
 「銀行がこの義務に違反し、その結果、反社会的勢力を主債務者とする融資につき、
 保証契約が締結された場合には、本件免責条項に言う被上告人(=銀行)が
 『保証契約に違反したとき』にあたると解するのが相当である」として、
 保証協会側が保証債務の履行を拒否できることを認めました。

4 この判決は、保証契約における主債務者の属性(反社会的勢力か否か)に
 関する錯誤が契約に及ぼす影響(民法第95条)や免責約款の効力に関し
 興味深い内容を含んでいます。
  しかし、それと同時に、「一般的に行われている調査方法等にかんがみ相当と
 認められる」範囲に限られるとはいえ、金融機関に対し、反社会的勢力か否かの
 調査義務があることを明確に認めた点で、反社会的勢力排除に関する近時の
 傾向と軌を一にするものと言えるでしょう。
  金融機関に対しては、排除ルールの明確化と
 審査のより一層の厳格化が求められるように思われます。